心臓のある左側の胸をさけ、右側の胸の五番目と6番目の肋骨のあいだを大きく切り開きます。
そのうえで、胸部食道と胃の一部を切りとるとともに、三領域のリンパ節も切りとります。
その後、新たな食道をつくるため、胃を引き上げて食道と同じように筒状につくり直し、残っている頸部食道につなぎます。
胃がんで胃を切りとってしまっている場合など、胃を使えないのであれば、小腸や大腸を代わりに使います。
再建した食道を心臓と肺の前にもってくる「胸骨後経路」が一般的
胸部食道がんの切除後の再建方法は、新たな食道をつくるときにどの位置にとおすかで3つに分けられます。
一つには胸骨(胸の中央にある縦長の骨)の前にとおす「胸骨前経路」、二つには胸骨の後ろで心臓の前にとおす「胸骨後経路」、三つにはもともと食道があった心臓の後ろにとおす「後縦隔経路」 です。
どの方法にするかは、安全性や再建後の食道の長さなどを考えたうえで決定します。
いちばん元のサヤにおさまっているのは、後縦隔経路です。
しかし、 この方法は大きな危険をともないます。
食道をつくるときに問題になるのは、縫い合わせがうまくいかずにもれが生じることです。
この縫合不全は15〜25%の割合でおこります。
遠くにある臓器を引っぱってもってくるので、つながりにくいのです。
もし心臓や肺の、うしろでつなぎ目からもれると生命にかかわります。
その意味でいちばん安全な方法は、胸骨前経路です。
しかし、食道の長さが短い場合には、この方法では再建は不可能です。
また、皮膚の下で食道がもりあがってみえるのは、たいていの患者さんが好みません。
そこで、国立がんセンターでは、95%の患者さんに胸骨後経路を適用しています。
しかし、この方法にも問題はあります。
心臓や肺を圧迫するので、心肺機能の弱っている患者さんには適用できないのです。
その場合は、胸骨前経路か後縦隔経路のいずれかが選ばれます。