腹部食道がんの治療について
腹部食道がんでは、左胸の下を切り開いて手術します。
腹部食道と胃の一部を切りとります。
それと同時に、周囲のリンパ節郭清をおこないます。
食道をつくるときには、小腸や大腸の一部をもってきて胃と食道のあいだにつなぎあわせます。
いずれの手術でも、患者さんの食生活に不都合が生じます。
前述したように、本来、食道は食べ物を胃に送りこむ運動をしています。
その機能がはたせなくなるので、食べたものが新しくつくった食道につかえたりすることがしばしばみられるようになります。
また、手術後に肺炎などの合併症をともなうことも20%の割合であります。
こうした合併症と前述した縫合不全によって、手術後一カ月以内に死亡することが2〜3%の割合であります。
早期では内視鏡を使った治療で道をそのまま残すことが可能
食道がんの手術は、胸を大きく開いておこなうことが多く、患者さんの体に大きな負担がかかります。
しかし、がんが膜内にとどまり、周囲や遠くの臓器に転移がみられない状態であれば、内視鏡による治療を選択できる場合もあります。
この方法は、のどに部分的に麻酔をかけ、ロから食道の内側に内視鏡を入れて、観察しながら、粘膜上にあるがんを内側から切りとります。
治療は一時間程度で終わり、入院も一週間程度ですみます。
胸を切り開く必要がないので、患者さんの体にも大きな負担がかかりません。
食道が元のまま残るので、以前と変わらない食生活を送ることができます。
また、粘膜の下までもぐりこんだ進行がんや、多発して範囲の広い早期がんに対しては、胸を開かなくてもすむ手術療法が選択されることもあります。
「食道抜去術」とよばれる方法です。
この方法では、のどとお腹を小さく切って、胸部食道を抜きとるので、患者さんにかかる負担が最小限ですみます。
その後、胃の一部を使って後縦隔経路で再建します。
しかし、この方法では周囲のリンパ節をいっしょに切除できません。
そのため、胸腔鏡を使って、開胸せずに周囲のリンパ節を切除する方法がおこなわれることもあります。