病原性大腸菌(下痢原性大腸菌)による腸炎
大腸菌は健康な人であれば誰でも腸管内に常に存在するもので病原性はありませんが、特定の大腸菌は下痢を引き起こします。
これらは病原性大腸菌といわれ、次の4種類が含まれます。
- 腸管病原性大腸菌(EPEC)
- 腸管組織侵入性大腸菌(EIEC)
- 腸管毒素原性大腸菌(ETEC)
- 腸管出血性大腸菌(EHEC、ベロ毒素産生性大腸菌:VTEC)
腸管出血性大腸菌は他の病原性大腸菌とは異なり、ベロ毒素を産生し、2次感染もみられる指定伝染病です。
汚染源は牛で、腸管出血性大腸菌のうち70~90%がよく耳にするO157です。
初期症状は泥状や水様の下痢便で、1~2日後に激しい鮮血便が出る出血性大腸炎を起こします。
下痢が始まって8日ぐらいに溶血性尿毒症症候群や脳症を続発することがあります。
エルシニア腸炎
エルシニア腸炎は、豚・牛・羊・馬・犬・猫などのエルシニア菌をもつ動物の糞に汚染された食物や水を摂取することが原因となります。
潜伏期間は平均5日で感染性は低く、ヒトからヒトへの感染はほとんどありません。
特に小さなお子さんは感染しやすく、保育所や小学校での集団感染の危険性があるのでご注意ください。
症状は下痢、腹痛、発熱、嘔吐などで、1~2週間続くことがあります。
まれに血便が出ることもあります。
成人の方に回腸末端に炎症を起こして右下腹部の腹痛を伴うことがあるので、虫垂炎(盲腸)と間違えられることがあります。
ブドウ球菌食中毒
ブドウ球菌食中毒は耐熱性エンテロトキシン(腸毒素)を産生する黄色ブドウ球菌に汚染されたものを食べることによる毒素型食中毒です。
毒素は長時間の冷凍、煮沸でも破壊されません。
胃酸や消化酵素でも不活化(ウイルスなどの感染力や毒性を失わせること)されにくく、消化管から吸収されて吐き気をもよおします。
感染経路で最も多いのは調理者の手指の傷口の化膿巣です。
症状は平均2~3時間の潜伏期の後に、突然の悪心、嘔吐、腹痛があります。
下痢、発熱はほとんどなく、たいていは24時間以内に症状が軽くなります。
ボツリヌス菌食中毒
ボツリヌス菌食中毒は腸詰中毒と言われていて、致死率の高い食中毒です。
十分に加熱されていない缶詰・瓶詰・真空パックの食品などの酸素が少ない場所で生産された食品中のボツリヌス毒素が消化管から吸収される中毒で、四肢麻痺・呼吸筋麻痺などをきたし、重症の場合では死に至ります。
缶詰・ソーセージ・蜂蜜にはご注意ください。
潜伏期間はだいたい12~36時間です。
食品を十分に加熱すれば食中毒を起こすことはまずありません。